夫亡き後も真面目に頑張る長男の嫁が「死後離婚」を選択した理由~愛子さんのケース~

山口良里子

大阪の司法書士事務所ともえみの山口良里子です。
近年、急増中の「死後離婚」。この3年で倍近くになっているそうです。
ともえみでも、沢山の方のご相談をお受けしています。

ただ、よくよくお話を聴いてみると「死後離婚したい」ということではなく
  •  将来の夫の親やきょうだいの介護の不安
  • 夫の親と同居しているが相続の時に揉めないか心配
  • このまま自分だけが、義理の親きょうだいに尽くして報われるのかという不満

そんな、不安や心配。そして、「嫁の責任」を一生懸命果たそうとするからこその不満。
「死後離婚という道しかないのでは?」と、思い悩まれてご相談に来られる方が多いように感じます。

今回は、ともえみにご相談いただき、最終的に「姻族関係終了届」を提出された愛子さんの事例を紹介します。

夫亡き後も真面目に頑張る長男の嫁が「死後離婚」を選択した理由~愛子さん(61歳)のケース~

 

大阪在住の愛子さん(61歳)は、夫の仕事の関係で30年前に大阪に引っ越してきました。子どもはいますが既に独立しており、夫婦二人暮らし。

5年前に義父が、3年前に義母がそれぞれ他界。岡山の実家、墓は、長男である愛子さんの夫が引継ぎました。愛子さんは「長男の嫁」として、空家になった夫の実家の管理や、お墓、法要なども頑張ってきました。

夫には姉がいますが、岡山でお嫁に行っているため、実家のことは手伝ったことがありません。

このような状況で夫が他界され、ともえみに相談に来られたのです。

 

家族関係図

 

 

長男の嫁は、いつまで夫の実家の管理と墓守をしないといけないの?

愛子さんのご相談内容はこうでした。

夫の49日が済んだころ、夫の実家と両親のお墓について、義姉に相談しました。

夫の墓を大阪の自宅の近くに建てたいこと、空家になっている岡山の実家と両親の墓を引き継いで欲しいこと、そして今後も岡山の実家で父母の法要を続けて行って欲しい、ということを。

 

すると、義姉に「私はお嫁に出ているので、そんな負担を引き受けることはできない。長男の嫁のくせに、ひどいことするわね。」と言われました。

 

愛子さんとしては、

  • 夫が一生懸命守ってきた実家だからできれば守ってあげたい
  • しかし、自分も高齢になり、岡山に通って亡夫の実家の管理をするのは無理
  • 子どもにそんな負担を引き継ぐことはできない

という想いがありました。

 

それなのに、思いもよらぬ義姉の言葉。

義理の父の葬儀も母が亡くなった時も自分が引き受けた。その後も「長男の嫁」として頑張ってきた。そして今回夫を見送った愛子さんは、いつまでこんなことを続けないといけないのかと何もかも投げ出して「死後離婚したい!」というのです。

 

愛子さん家族の相続のポイント

そこでともえみは、まず、目の前の「ご主人の遺産の相続」から片づけることを提案しました。

愛子さんのご主人の遺産は、

  1. 岡山の夫の実家、両親の墓
  2. 大阪の自宅
  3. 預貯金

です。

愛子さんは、大阪の自宅と預貯金を引き継ぐのはうれしいけど、空家のままになっている夫の実家と両親の墓まで引き継ぐのは大変だなと感じていました。

どなたかがお亡くなりになられたら、その方の名義の財産(遺産)は、

  • 遺言があれば遺言どおり
  • 遺言がなければ「相続人全員の話し合い(遺産分割協議)」

で決まります。

遺言がない場合、「相続人でない人」に、遺産を直接引き継ぐことはできません。

今回、夫の遺産の相続人は、妻である愛子さんとお子様の二人でした。

遺言はありません。そのため、愛子さんとお子様の「遺産分割協議」となります。

愛子さんが希望するように、夫の実家と墓だけ「別の人」に引き継ぐというわけにはいかなかったのです。

愛子さんのお子さんは、「お父さんの財産は全部お母さんが引き継いだらいいんじゃない?」とおっしゃってくれました。

ですので、一旦、ご主人が残されたすべての財産を愛子さん名義に引き継ぎ、その後、「そのあとのこと」を考えることにしましょうとご提案しました。

 

遺産相続手続きの流れ

  1. 夫の正式な相続人が誰かを調査します。
  2. 相続関係図の作成→愛子さんとお子様のみが正式な相続人と確定します。
  3. 相続人全員で、遺産分割協議(愛子さんが全財産相続するという内容)をします。
  4. その内容を、「遺産分割協議書」にまとめ、サインと押印をします。
  5. 遺産分割協議書の内容に従って、財産の名義変更手続きをします。
    5-1.夫の実家の名義変更(相続登記:岡山の法務局に申請)
    5-2.大阪の自宅の名義変更(相続登記:大阪の法務局に申請)
  6. 預貯金の名義変更→すべて愛子さん名義の預金となります。

相続の手続きは以上の6ステップです。

ともえみに手続きの依頼していたので、愛子さんとお子様がされた作業は、[4.遺産分割協議書への署名と押印]をするだけで済みました。

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そして、ここからが「そのあとのこと」となります。

ともえみが提案したのは、

  1. 空き家である実家は近所の方へ売却するかもらってもらう
  2. 両親の墓は墓じまいをする
  3. やれることは全てやり、気持ちの区切りとして「姻族関係終了届」を出す

の3つでした。

 

夫名義の遺産の行方と死後離婚

岡山の実家は、近所の方に家財の撤去や墓じまいにかかる費用分くらいで買ってもらうことができました。そして、岡山のお墓は墓じまいをしました。夫の両親は岡山のお寺に永代供養してもらい、夫の墓は自宅の近くに建てました。

そして、全てをやり切ったあと、区切りとして「姻族関係終了届」を提出しました。死後離婚が成立したということになります。

姻族関係終了届を提出したことは、義姉に知らせてはいません。わざわざ、事を荒立てる必要もありませんから。

 

 

死後離婚後の愛子さん

 

クタクタになったけど、今はすがすがしい気持ちです。

 

これが、姻族関係終了届を提出した後の愛子さんの言葉です。

現在、愛子さんは夫が残してくれた家と少なからずの預貯金と年金で、趣味のコーラスとボランティアで大忙しの「おひとりさまライフ」を送っていらっしゃいます。

そしてお子様には、自分が死んだら夫と同じ墓に入れてほしいこと、お墓の管理が大変になったら墓じまいしてもいいことを伝えたそうです。

さらに、万一介護が必要になったら自宅を売却し、自分が決めた施設に入れてもらえるよう、お子様と「家族信託」の契約を結ばれました。

「子どもとそのお嫁さんに私のような苦労を掛けたくないですからね」と笑う愛子さんは、初めて相談に来られた時とはまるで別人のようでした。

 

安心

 

愛子さんのように、「嫁の責任」を全うしようと真面目に考える人ほど、姻族との関係に悩んでしまいます。

今回のケースのように、全てやりきった後に気持ちの区切りとしての「死後離婚」の選択は、その後の人生を晴れやかにするための手段だった。そう感じます。

 

ともえみには、沢山の「親の介護」や「相続」でお悩みの方からのご相談が寄せられます。自分たちは大丈夫だろうか?と漠然とした不安を抱えたまま毎日を送るのは幸せではありません。そんな時は、ぜひ、ともえみの無料相談をご利用ください。

現状を整理し、リスクをチェックし、解決策をご提案。お一人おひとりにピッタリの解決策がきっと見つかります!

 

死後離婚にならないための「生前対策」をされて、安心で笑顔の毎日を過ごされている方もたくさんいます。記事にまとめましたのでご参考にしていただければ幸いです。

【解決事例】死後離婚に悩み、「死後離婚しない選択」をした妻たちがしていたこと。5つのケース

【妻たちの死後離婚対策】必要度チェック!〜安心して笑顔の毎日を過ごすために「今」できること〜

 

 

愛子さんご家族にご利用いただいたサービス

相続手続きまるごとおまかせパック

相続不動産活用コンサルティングサービス

家族信託サポートパック

 

 

■NHKあさイチ出演☆感謝

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山口良里子

この記事を書いた人

山口良里子

司法書士事務所ともえみ 代表司法書士 
1999年司法書士試験合格。
家族信託・後見・遺言・おひとりさま支援・生前贈与・遺産整理などの制度を駆使し、お客様とそのご家族の「安心な老後」と「幸せな相続」を実現する高齢者支援専門の司法書士。
相談実績は、1300件超。2009年大阪市きらめき企業賞受賞。