4.親なき後問題対策
障碍のある子どもをお持ちの親御さんから、以下のご心配をお聞きします。
• 自分が亡くなったあと、子どもの生活が心配
• 自分がしっかりしているうちに、子どもの将来の生活を保障したい
ここで活用できるのが、家族信託(民事信託)(特に福祉型信託と呼ばれます)です。
自分が亡くなった後、子どもの生活をみてくれる人に財産を託し、子どもに定期的に財産を引き渡すことで安定した生活を保障することができます。
福祉型信託は、将来親御さんが亡くなった後に親の財産を障碍のある子に確実に渡すため、あらかじめ生前に親と信頼できる人(親族や兄弟・姉妹)に財産を託し、自分の死後から財産管理をしてもらうための契約です。
福祉型信託の活用例
状況
Eさんには3人の子どもがおり、障碍のある娘がいます。
現在、Eさんがその娘さんと同居して面倒をみていますが、自分が亡くなった後、娘さんの生活をみてあげられないことが心配です。
長男と娘さんは仲が良く、自分が亡くなった後は長男に娘さんのことをみてほしいと思っています。 娘さんには子どもがいないので、娘さんが亡くなった後、残ったEさんの財産は長男さんにもらってもらえばよいと思っています。
家族信託(民事信託)の設計
Eさんの目的は、自分が亡くなった後の娘さんの生活を保障することです。
そこで、Eさんの財産を信託し、Eさんを委託者、受託者を長男、第一次受益者をEさん、Eさんが亡くなった後は、第二次受益者を娘さんに設定します。
Eさんの死後は、Eさんの遺産を長男が預かり、毎月少しずつ娘さんへ渡すように取り決めをしておきます。長男が万が一それを怠ってしまうと娘さんの生活ができないため、長男がきちんと財産管理をしているかをチェックするため、司法書士が監督人になるよう契約を結びます。 受益者が全員他界した場合に残った財産は、長男へ引き継がれることにしておきます。
家族信託(民事信託)のポイント
遺言で障碍のある娘さんに財産を残すことも可能ですが、遺言は原則相続が発生した後、1度きりの財産承継しか決めることができません。そのため毎月いくらの財産を引き渡すことや、財産の引渡しを管理する人を確実に指定することができない制度です。
一方、家族信託(民事信託)では、受託者を指定することで、長期に渡った財産管理を託すことが可能です。親なき後問題の解決策として今注目をされているのがこの福祉型信託です。