財産管理契約との違い
財産管理委任契約と家族信託(民事信託)は、似た働きを持っています。
たとえば、父親の不動産を息子が売却をするというケースで、父親は息子に売却を「委任」することで、息子が売却をできるようにする財産管理委任契約を締結する場合は、父親が「委託者」となり、息子が「受託者」となり財産を管理する家族信託(民事信託)契約を締結する場合と同じように見えます。
両者の違いは、
財産管理委任契約が「本人の判断能力があることを前提」としているのに対し、家族信託(民事信託)は「本人の判断能力が低下しても継続することを前提」としている点です。
財産管理委任契約は、「本人の判断能力が低下した後は使えない」契約であるのに対し、家族信託(民事信託)契約は「本人の判断能力が低下しても継続して使える」契約です。
父親と息子の間で、銀行口座の名義変更を行う委任契約、もしくは不動産を処分する委任契約を結んだとしましょう。
このとき、父親と息子間では委任契約は行われていますが、銀行口座・不動産の名義は以前父親のままです。そのため、どちらの場合も本人確認を求められます。
父親が元気なうちは、本人確認が可能ですが、認知症になってしまうと本人確認をとることが不可能となります。
そのため、本人確認ができない以上、委任契約があったとしても息子は名義変更を行うことも不動産を処分することもできません。
一方、家族信託(民事信託)の場合、信託を開始した時点で信託財産は、父親(委託者)の名義から息子(受託者)の名義に変更されます。(利益は、父親(受益者)に帰属)
そのため、認知症に備えた長期的な財産管理を希望する場合には、家族信託(民事信託)の方が有効であると言えます。